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最高裁判所第三小法廷 昭和34年(オ)539号 判決 1961年12月05日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人山本松男の上告理由第一点について。

自己の商号を使用して営業をなすことを許諾した者は、その者の営業の範囲内の行為についてのみ商法二三条の責任を負うものと解するのが相当である。本件につき、原判決の確定した事実によれば、被上告会社はミシンの製造販売を目的とするものであつて、電気器具の販売はその目的に含まれておらず、その種の営業を営んではいないところ、竹内平作は被上告会社から同会社北海道営業所という名称を用いてミシンの販売をすることを許されていたが、同人は勝手に電気器具の販売をも含み、上告人と前記名称を用いて原判示電気器具の取引をしたというのである。そうとすれば、本件取引は被上告会社の営業の範囲内の行為に属せず、したがつて、被上告会社は本件取引について責を負うものではないといわなければならない。このことは、所論のごとく、ミシンと電気器具とが類似の部門における商品であるとしても、結論を左右するものではない。されば、原判決には所論の違法なく、論旨は採用できない。

同第二点について。

論旨は、原審の裁量に属する証拠の取捨判断ないし事実の認定を非難するものに帰し、上告適法の理由と認められない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 五鬼上堅磐 裁判官 河村又介 裁判官 垂水克己 裁判官 高橋潔 裁判官 石坂修一)

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